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生明慶二 インタビュー


(3)

池野成




 ―――池野成先生ともたくさんのお仕事をご一緒されたとうかがっています。


 池野さんの録音はもう数えきれないぐらいやりました。
 『夜の蝶』(1957年 大映東京/監督 吉村公三郎)の劇伴も私は演奏しましたから。演奏しながら「池野さんの音楽良いなぁ」と思いましたよ。
 池野さんは吉村監督にバカに気に入られちゃって、吉村監督の作品を何本もやってますよね。

 池野さんっていったらねぇ……。

 例えば池野さんの鍵盤の曲なんてのは誰もやりたがらなかったですよ。スタジオミュージシャンみんな「嫌だっ!!」って言って(笑)。それぐらい難しい。あれはとてもじゃないけどねぇ‥。譜面だってね、ホント何かの模様に見えちゃうぐらいビッシリ音符が書いてあって、とにかく難しいんですよ。

 それとか、ある時オーケストラの録音だっていうんで準備してたら、コントラバスを弾く人が

「あのー、コントラバスのところに間違ってチェロの楽譜がきてますよ」

 って作曲した池野さんのところに持ってきたんだよね。そしたら池野さんが

「いやー、これ、コントラバスの楽譜なんです」

 もうね、楽譜持ってきた人の顔が真っ青になってるわけ(笑)。
 
 打楽器もオーケストラになると何人かで演奏することになるんだけど、先輩の打楽器奏者なんか池野さんとなったら楽譜見ただけで「こりゃダメだ」ってすぐ僕ンとこに持ってくるんだよ(笑)。それでしょうがないからやるわけだけど、はじめの頃は手が出なかったですよね。

 だから「今日の作曲は池野さん」って聞いただけでみんな逃げちゃう(笑)。

 それでも「劇映画」の音楽だったらまだね、どうってことない時もあったけど、問題は「記録映画」ね。これがねぇ‥、やたらに難しいんですよ。
 記録映画っていうのは劇映画に比べたらストーリーの展開とか役者のセリフに縛られないで、純粋に映像から発想を得て音楽を書けることが多いでしょう。つまり作曲家の腕の振るい所なわけですよ。自分のサウンドを追求するんだよね。

 だから「記録映画で音楽は池野成」なんて日にはみんな仕事に来ない(笑)。

 だけどねぇ、音楽ってのは不思議なもんで、たとえば松村禎三さんの曲っていうのも取っ付きにくかったけど、とにかくやってるうちに弾けるようになっちゃうんですよね(笑)。だんだんとその作曲家の「クセ」っていうのがわかってくる。もちろんそれがわかるには何年かは掛かるわけですけど。
 そうするとね、池野さんや松村さんとかの打楽器は記録映画だろうが何だろうがぜんぶ僕が一手引き受けになっちゃうわけですよ(笑)。まあ後から思えばいろいろ勉強にはなりましたね。

 でもたまには池野さんにも悲劇がありまして(笑)。







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