映画『イチかバチか』(東宝 1963年 監督:川島雄三 音楽:池野成)が、東京・神田の神保町シアター特集企画「伴淳三郎と三木のり平―昭和に愛されたふたりの喜劇人」で上映されます。〔上映期間:2018年10月27日(土)~11月2日(金)〕
1963年の東宝作品。城山三郎の同名小説の映画化。脚色は菊島隆三。川島の遺作。
鉄鋼界の大物経営者が、イチかバチかの大博打に出、ありったけの資本を投入して東洋一の製鉄所を建設しようと、その場所を物色しはじめる。その話を聞いた地方都市の大風呂敷市長が、これまたイチかバチか、詐欺同然の手法で誘致をはかる。経営者はそんな市長のやり口に怒りだすかと思ったら、意気投合してしまい、2人は手を携えて更なる野心に燃える。
高度成長期らしい物語だが、川島はそれを映画にするにあたり、更なる利益、更なる名声、更なる成功へと目を血走らせる経済人や地方政治家を喜劇役者に演じさせ、喜劇役者特有のヴァイタリティと高度成長の熱気を合体させようと、経営者に伴淳三郎、市長にハナ肇を充てた。このアイデアが映画に、殆ど「極端リアリズム」といった具合の異様なテンションの高さを産み、グロテスクの域に達して、いかにも川島の最後の映画らしい。
音楽は高度成長のイケイケの乗りで、伴とハナを後押しする。8分の7拍子のアレグロと、それよりテンポは遅いがトロンボーン主体のオーケストレーションにより極めてポテンシャルの高い音響の流動を聴かせる4分の7拍子の曲が、主要なもの。
解説:片山杜秀(CD「池野成の映画音楽」〔4枚組〕解説書より)
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作曲家 池野成 研究活動
CD「池野成の映画音楽 牡丹燈籠 妖怪大戦争」
CD「池野成の純音楽」