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日本狂詩曲(1935)
JAPANESE RHAPSODY

三石精一 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団

1957年8月2日放送 NHKラジオ『現代日本の音楽』マスター音源
(収録日不明)
※モノラル録音
〔音源提供:NHK/NHKサービスセンター〕



【作曲者の言葉】

 (前略)此の度の應募曲は《日本狂詩曲》と名は附されては居るけれども、今シーズン《三五-三六》ファビアン・セヴィツキイの指揮の下にボストン・ピイプルス交響樂團に依つてジョルダンホールで世界初演される私の同名の交響曲の全部を包含する譯ではない。其れはコンクウルの時間の制限上、重要な第一樂章を取り除く事を餘儀なくされて作品は他の立派な全身像達の中に手を捥ぎ取られたトルソオのみぢめな形で出品されたのである。
 此の作品は初め三浦淳史君《新音樂聯盟の重要な役割を演じて下れて居る》の薦めでファビアン・セヴィツキイ《説明するまでもないと思ふ》の爲めに稿を下したのであつた。セヴィツキイからの彼の書信には次の句が讀まれる。『唯だヤマダと言ふ作家の作品を聞いた以外には、日本が音樂上何の樣な事を爲て居るか私は全く無智である、作品の演奏を約束する事は出来ない。其れは唯だ内容の如何による、とは言へ勿論グリュンベルグ、ブロッホ、ショウスタコヴィッチ等のモダニズムも私の演奏を防たげはしない』
 私は此の作品に沒頭したのである。
 フィラデルフィア・チャムバー・シムフォニエッタの爲めに書き初めに此の曲は軈てセヴィツキイがボストン・ピイプルス交響樂團の指揮者に成つた事を知つて《私も其の頃此の作品がフル・オーケストラを必要とする事を痛切に感じて居たので早速》十六個の打樂器郡と二臺のハープ、一臺のピアノを持つ三管編成のフル・オーケストラの爲に構想を變へたので有つた。去年(一九三五)の七月の終りに近く完成して次のタイトルを持つ私のスコアを彼に捧げたのである。『日本狂詩曲・第一樂章日本舞踊調(ヂョンカラ)・第二樂章ノクチュルンヌ・第三樂章祭り』
 其の頃又三浦君が早坂文雄君《此の度の放送協會のコンクウルに入賞した私と同齢の新音樂聯盟が持つ優ぐれた作曲家》の熱心な薦めに從つて第一章を除いてチェレプニンのコンクウルの方にも出品して置いた。 
      ×
 十月も終りに近い頃、セヴィツキイから日本狂詩曲をボストン・ピイプルス交響樂團に依つて自分の出來得る限りのタクトを以つて今シーズン中に《三六年四月二十六日迄》に全曲の世界初演を爲したい旨の書信があつた。そして私のスコアは圖らずも彼のジョン・アルデン・カーペンター《魔天樓や氣狂い猫等のモダアンなジャズバレーを書いて居るアメリカの手の着けられない作家》の絕大な讃辭を受けたのであつた。
      ×
 以來私は聯盟員の心からの援助を受けて全パートのコピイに專心したのであるが、自由な時間を殆んど持つ事の出來ない私は每日數時間の睡眠を取る事さへも困難であつた。そして此の捗取らない此の仕事が漸くあと二三日で完成し樣として居た十二月の十七日、北太平洋に面した汽車も無い小さな港町で私はチェレプニンの入賞の報に接したのであつた。(一九三五・一・一六)

(出典:『月刊楽譜 二月号』 月刊楽譜発行所 1936年 収録「日本狂詩曲と其の作家への蛇足」)



  ロシア生まれの作曲家 アレクサンドル・チェレプニンが、日本人作曲家の管弦楽作品を欧米に紹介する契機とすべく開催したチェレプニン賞コンクールで、チェレプニンを筆頭に審査員のアルベール・ルーセル、アルテュール・オネゲル、アレクサンドル・タンスマン、アンリ・ジル=マルシェックス、アンリ・プリュニエール、ジャック・イベール、ハルシャーニ・ティボール、ピエール=オクターヴ・フェルーら(当初はモーリス・ラヴェルも名を連ねていたが、病気のため審査に参加できず)の満場一致を得て第一位入賞。

 1936年4月5日、フェビアン・セヴィツキー指揮 ボストン・ピープルズ交響楽団(於:ジョルダンホール)により初演された。

 Salida・CD「伊福部昭の純音楽」収録音源は、本作品最古の国内セッション録音であり、当時43歳の作曲者立ち合いのもとレコーディングされている。
 録音時、25歳だった指揮者 三石精一氏は、本音源のCD化に際し、

「録音当日の1日だけの練習本番でしたが、大変大胆な楽器の使い方をされていて、通常とは大分違うオーケストレーションに、オーケストラの団員も私も非常に興味を覚え、大変楽しく演奏した事を記憶しております」

 と当時を振り返られている。



Salida・CD「伊福部昭の純音楽」
JASRAC 許諾番号:R-2090699JV, R-2090700JV
JANコード:4571503310140

CD3枚組DESL-014~16¥7,000+税

7作品全音源初CD化


【「伊福部昭の純音楽」特別寄稿】




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