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Salida・出口寛泰さんの仕事



芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ運営顧問、元東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団事務局長

奥平 一


 このような録音が残っていたとは、まったく以て驚きである。このCD は、伊福部昭の管弦楽作品の演奏様式の歴史的変遷に興味を持つ人たちにとって、今後なくてはならない価値あるものとして扱われることだろう。NHKに長い間保管されていた音源を発見して公開までこぎつけた、Salidaを主催する出口寛泰さんに敬意を表したい。

 出口さんはこれまでに、伊福部の重要な弟子でありながら、焦点をあてられることの少なかった小杉太一郎、山内正、池野成らの作品を探索、時にはセッション録音までしてCD化をし、関係者の証言を集めてはアーカイヴして公開するなど、“伊福部楽派”の裾野の広さを示して見せる重要な仕事をプロデュースして来た。

 振り返れば、国内に於ける伊福部の管弦楽作品の演奏、録音は、山田一雄をもって嚆矢とする。次に山岡重信があり、1980年には芥川也寸志が指揮した「日本の交響作品展4 伊福部昭」に於ける演奏と私家版LPが伊福部復活のきっかけとなったことは衆目の一致するところである。更には、石井眞木によるパフォーマンス、近年では広上淳一らによる録音全集、そして井上道義の実演が評判を呼んでいる。

 山田がマーラーの孫弟子として独特のテンペラメントを発揮したのに対して、音楽の退屈を恐れた芥川は前向きなテンポとアマチュア独特の無骨さ、加えて真摯且つ一徹な高校野球的熱狂で聴衆の共感を呼んだ。その後、新星日本交響楽団や新交響楽団で伊福部作品を指揮した石井眞木は、父である舞踊家・石井漠が踊った伊福部昭の舞踊音楽「釈迦」のピアノ伴奏を百回以上演奏して身に付けた、伊福部+漠の身体的エネルギー感とテンポ感をその基盤として、作品の解釈に相違を示した。

 ストラヴィンスキー作品の演奏を、指揮者のP.モントゥーからP.ブーレーズ、フランソワ=グザヴィエ・ロトへと辿れば、時代及び演奏を統率する指揮者が持つ文化的背景によって、作品はまったく違った様相を呈することがわかる。

 伊福部作品の演奏が“事件”ではなくなった現在、その演奏様式の変遷に注目したい。伊福部作品によって編まれたこのCDは、日本の音楽文化の演奏史を辿る上で欠かせない。



Salida・CD「伊福部昭の純音楽」
JASRAC 許諾番号:R-2090699JV, R-2090700JV
JANコード:4571503310140

CD3枚組DESL-014〜16¥7,000+税

7作品全音源初CD化


【「伊福部昭の純音楽」収録内容】


【「伊福部昭の純音楽」特別寄稿】




取り扱い


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【CD「小杉太一郎の純音楽」報道記事】






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CD「伊福部昭の純音楽」収録内容


作曲家 伊福部昭 略歴




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