バレエ『角兵衛獅子』は、台本・演出振付:橘秋子、音楽:山内正により1963年11月20日、牧阿佐美バレエ団第9回定期公演で初演されました。
「角兵衛獅子」とは、頭に小さな獅子頭、脚絆に高下駄を履き、胸に小さな腹当をつけた装いの子ども達が親方につれられ舞や曲芸を行い諸国を巡る旅芸人の一団のことをさします。新潟県西蒲原郡月潟村(現・南区月潟)を発祥の地とし、同地で年に一度行われる地蔵祭りには諸国の旅に出ていた芸人達が一堂に会し、その芸能を競演奉納しました。
また、この時には様々な理由で我が子の行方がわからなくなった母親が対面の奇縁を願って全国から集まってくるのが常でした。
新潟市南区月潟他で配布されている
「角兵衛獅子の由来」
この「角兵衛獅子」を題材とするグランドバレエ『角兵衛獅子』の初演は大成功をおさめました。
特にさまざまな踊りが披露されるいわゆるディベルティスマンになっている第二幕・地蔵祭りの場面は好評を博し、以降、再演される際にはこの場面を中心として構成されるのが定番となります。
そのような中、バレエ『角兵衛獅子』を現在唯一レパートリーとして継承する新潟シティバレエ団・主宰者 渡辺珠実氏は、2010年「新国立劇場地域招聘公演」で再び本作品を取り上げるにあたり、長年上演されてこなかった第1幕を含む全幕上演を決意。牧阿佐美氏をはじめとする、かつて携わったスタッフの方々と協議を重ねられます。
その結果、長い時間の経過の中で一部散逸の状態にあった楽譜は、同じく初演に携わった指揮者 福田一雄氏の手により補完され、奇しくも作曲家 山内正の没後30年にあたる年月である2010年12月に全幕上演が行われました。
2010年12月に行われた
バレエ『角兵衛獅子』全幕上演プログラム
日本バレエ界の歴史的演目の再演とあって、チケットは前売りの段階で完売。伝説の作品をひと目見たいという多くのバレエ関係者が見守る中、復活上演は見事に成し遂げられたのでした。
その後、2014年1月には「角兵衛獅子」発祥の地である新潟において、再び全幕上演が行われました。
2014年1月に行われた
バレエ『角兵衛獅子』全幕上演プログラム
バレエ《角兵衛獅子》の音楽は日本情緒にあふれ、且つ明快で力強い律動を持つ楽曲群によって構成されており、初めてのバレエ作品にもかかわらず、一時間近くの大作を華麗に彩った山内の技量に驚かされます。
なお、山内は本作の他に『迷路』(1973)、『祇王うたかた』(1980)(ともに振付:牧阿佐美)、『おしどり』(1978)(原作:小泉八雲、振付:小林恭)のバレエ作品を作曲しています。
【作品作曲経緯】舞踊家 牧 阿佐美
インタビュー
【バレエ音楽《角兵衛獅子》音源を求めて】
CD「山内正の純音楽」収録作品
CD「山内正の純音楽」
作曲家 山内正 研究活動