作曲家 小杉太一郎氏の Salida調査活動により、舞踊曲「ティンパニー」(1954)、「踊場のある風景」(1955)のリハーサル用ピアノリダクション譜が発見に至りました。
詳細は以下をご覧ください。
小杉宅 地下倉庫にて2作品を発見
楽譜表紙(左)には「TIMPANIANA」と書かれているが、舞踊家との打ち合わせで
最終的に「ティンパニー」という作品名になったものと考えられる。全30ページ。
舞踊作品「ティンパニー」は舞踊家 江口隆哉氏の実弟、舞踊家 江口乙矢氏により作曲が委嘱され、1954年11月4日、江口乙矢・須美子舞踊団東京公演
上田 仁 指揮 東京交響楽団(於:日比谷公会堂)で初演された。
また、その後1956年9月22日、江口乙矢・須美子舞踊団公演(於:大阪産経ホール)、1957年3月15、16日、江口隆哉・宮操子 江口乙矢・須美子 両舞踊団 モダン・ダンスの夕 宮本 政雄 指揮 関西交響楽団(於:宝塚大劇場)、1957年4月25日、江口乙矢・須美子舞踊団東京公演(於:産経会館ホール)で再演が重ねられている。
作品は全3章からなり、当時の上演プログラムには
ティンパニをとり入れて三章の群舞にまとめたものでティンパニを打つ動きや、ティンパニの形、音色を動きのテーマとしてシンバルの金属的な音色とのコントラストなどを織りなして行く習作的なものとして構成した作品。
と記載されている。
しかし、これまで「ティンパニー」のオーケストラスコアなど関係資料は発見されておらず、長らく楽曲内容が不明の作品であった。
舞踊家 江口 乙矢
※ 江口 須美子様より御了承を得て掲載
舞踊家 江口乙矢は青森県に生れ、20代前半に上京。モダンダンスの草分けである実兄の舞踊家 江口隆哉に指導を受け、東京で舞台活動を行う。その後、独立し、大阪に江口乙矢・江口須美子舞踊研究所を開設。舞踊作品「道産子」で注目を浴びて以来、「現代神話」「オルフェウス」「雪」など数々の作品を創作している。
作曲家 小杉太一郎には「ティンパニー」に続き、舞踊作品「トルソー」(1955)の作曲も委嘱している。
また、乙矢氏の実兄、江口隆哉氏の舞踊作品 日本の太鼓第三輯「綾の太鼓」(1963年11月25日、江口隆哉舞踊公演 於:産経ホール)も小杉が音楽を担当している。
小杉太一郎氏 直筆デザインの楽譜表紙(左)。全55ページ。
舞踊作品「踊場のある風景」は舞踊家 伏屋順仁氏により作曲が委嘱され、1955年3月26日、伏屋順仁ダンスリサイタル 小杉太一郎 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団(於:東横ホール)で初演された。
舞踊曲「ティンパニー」同様、これまでオーケストラスコアなど関係資料が一切発見されていない作品であり、今回の発見により1時間近くの大作であることが判明した。
舞踊家 伏屋 順仁
幼少の頃より、茶道、日本舞踊、謡を習う。狂言を茂山千作に師事。
江口・宮舞踊研究所に入所し、「プロメテの火」「日本の太鼓」に出演。その後、自身でも創作を始め、東京新聞舞踊コンクール3位入賞。
1955年、渡仏。パリにてマイムをエチエンヌ・ドクルーに師事。
カロイドスコープ座に於けるパリ初公演の後、欧州各地、フェスティバルなどの巡演を行う。
1980年、パリにテアトル・ド・タン(時間劇場)設立、ディレクターとなる。多くのギリシア劇、三島近代能、チェコフ近代劇、創作劇を上演。
2008年、マジョルカ島パルマに美術館を設立。
これまで、フランス国シュバリエ賞、パリ市銀賞、アート・シャンヌ・レトル銀賞、メリテ・エ・デヴマン金賞などを受賞。
スペイン在住。
作曲家 小杉太一郎には「踊場のある風景」の他、舞踊作品「歩いてみよう」(1955)等の作曲を委嘱しているが、いずれの作品も2012年現在、楽譜の発見には至っていない。