《交響楽》は俳優・映画監督の小杉勇が、ロケーションのためブラジルを訪れた際、当時、新進作曲家として活動を始めたばかりの息子・太一郎に「ブラジル連邦共和国による日本移民受け入れ60周年を祝う交響曲」を書かせると約束してしまったことから急遽構想され、1953年6月9日に完成した。
ブラジルの日系移民のために書かれた本作品は、日本への郷愁を駆り立てる子守唄やわらべ歌の素材を取り入れつつも、大編成ならではの力強い響きによって逞しい労働歌や祭りの熱狂を彷彿とさせる二面性を備えている。1952年に作曲家としてデビューし、1953年後半から映画界で活動を開始するまでの半年間、その全てを注ぎ込んだ渾身の一作であり、舞台芸術や映像のためではなく純粋な管弦楽のために作曲された唯一の作品である。
《交響楽》は、これまで自身が作成したプロフィール内にその作品名が認められるのみであったが、原譜を献呈した後も作品を手許に残しておきたいという気持から作成された「写し」が、2010年、小杉宅から発見された。
本作品が作曲後、国内外で演奏されたという記録はまったく確認されておらず、2013年6月23日、宮城県石巻市で行われた「東日本大震災復興祈念事業 カンタータ大いなる故郷石巻 公演」での佐藤寿一指揮、石巻市民交響楽団・日本フィルハーモニー交響楽団有志・首都圏311有志の合同オーケストラによる演奏が本邦初演となった。
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CD「小杉太一郎の純音楽U」収録作品(2)
舞踊音楽 日本の太鼓 第三輯《綾の太鼓》
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