戦後高度経済成長のもとでの繁栄の中で、享楽に身をゆだねる日本人の暮らしを形容する「昭和元禄」という言葉が盛んに飛び交っていた1960年代末。
国立劇場は、雅楽をより普及・活性化させるため、新たな雅楽作品を現代の作曲家に委嘱することを発案。最終的に作曲家 黛敏郎に新作雅楽が委嘱されることとなります。
また、この国立劇場の新作雅楽委嘱の取り組みは、その後も国内外の作曲家に行われ、武満徹 《秋庭歌一具》をはじめとする数々の雅楽作品が生まれる契機となりました。
黛は、平安時代以降に洗練された雅やかで上品な雅楽ではなく、平安以前の奈良時代に使われていた古楽器「
1970年代における「昭和元禄」的な時代の中で刹那主義におちいり、生命力を失っていく現代人に対するアンチ・テーゼが込められたその新作雅楽のタイトルは―――《昭和天平楽》。
《昭和天平楽》は、1970年に初演され、後にLPレコードが発売されたものの、通常の雅楽では使用されない古楽器が必要なことなどから、その後再演されることはありませんでした。
そのような状態の中、初演から47年ぶりに「サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2017」で演奏された《昭和天平楽》音源を公益財団法人サントリー芸術財団より提供いただき、さらに「サマーフェスティバル2017」総合プロデューサーをつとめられた音楽評論家 片山杜秀さんによる「作曲家 黛敏郎と昭和天平楽」についての語り下ろし音声を加えた特別盤として初のCD化を実現しました。