「六つの管楽器の為のコンチェルト」は、東京藝術大学音楽学部作曲科4年在学中の1952(昭27)年、小杉太一郎25歳の作品であり、同年行われた第21回毎日音楽コンクール(現・日本音楽コンクール)作曲部門第2部(室内楽曲)で第1位を獲得した。
なお、コンクールの結果は、
第1位:本作品
第2位:諸井誠「ピアノ組曲第2番」
第3位:村田英夫「木管五重奏」、棚瀬正民「弦楽四重奏曲」、
岩村充起「フルート、オーボエ、クラリネット、及びピアノの為の四重奏曲」
となっており、加えて本選会における本作品の演奏は「東京管楽器協会」(Fl. 吉田雅夫、Ob. 鈴木清三、Cl. 大森勇、Fg. 戸澤宗雄、Hr.
千葉馨、Tp. 金石幸夫)の錚々たるメンバーによって行われている。
1952年第21回毎日音楽コンクールプログラムより
作品は、
T Allegro giusto
U Andante sostenuto
V Allegro ma non tanto e scherzoso
W Allegro con allegrezza
の4曲構成となっている。
発見された
「六つの管楽器の為のコンチェルト」楽譜
本CD企画「小杉太一郎の純音楽」は、先述のとおり2007年に小杉宅で発見された一連の楽譜によって実現したものであるが、発見された「六つの管楽器の為のコンチェルト」の楽譜は、厳密には「原譜」と呼べるものではなく、コンクールへの提出に際し、予備として作成することが義務づけられた手書きの「控え」であった。
このため、楽譜には作曲者本人にとって「書くまでもないこと」や「前に書いたこと」は最低限しか記入がなく、曲が進むにしたがって楽想記号やアーティキュレーション記号はどんどん端折られ、第4曲の後半に至っては、ほぼ全てが省略されている状態だった。
しかし、小杉驤齪Y氏の入念な校訂作業によって遂に本譜は復元され、さらにリハーサルで演奏家の方々からいただいた的確かつ実践的な御指摘を加味し、レコーディングが行われた。
「六つの管楽器の為のコンチェルト」がコンクール本選での初演以降演奏されたという記録は現在のところ見つかっておらず、清書譜の行方は今もって不明である。
戦後の日本の作曲家たちの足跡を辿るべく、1998年から2007年の9年間に亘って開催されたコンサート・シリーズ「日本の作曲・21世紀へのあゆみ」は、本作品を取り上げるべく、楽譜の存在を関係者に問い合わせたが、当時はまだこの「控え」が発見されておらず、演奏には至らなかった。
本CDのレコーディングは初演からちょうど60年を経て実現された蘇演となる。
「六つの管楽器の為のコンチェルト」レコーディング風景
CD「小杉太一郎の純音楽」収録曲