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小杉太一郎 作曲 石島恒夫 作詩

《カンタータ 大いなる故郷石巻》について

《カンタータ 大いなる故郷石巻》コピー譜
《カンタータ 大いなる故郷石巻》コピー譜



 小杉太一郎 作曲 石島恒夫 作詩《カンタータ 大いなる故郷石巻》スコア最終ページには、「1973年10月29日」に完成した旨が記されている。
 それは実に初演のわずか5日前であった―――。

《カンタータ大いなる故郷石巻》完成日



 1973年が明けて間もなく、「大いなる故郷石巻」の草稿を手に小杉宅を訪れた、当時の石巻芸術協会事務局長 石島恒夫からの委嘱を受け、《カンタータ 大いなる故郷石巻》の作曲は開始された。

 故郷の祝典のためという重圧に苦しみ作曲は困難を極めたが、小杉はその持てる能力を結集させた。

 作曲にあたっては、小杉の弟子で、一世を風靡したテレビドラマ『西部警察』の音楽を担当してメインテーマ曲と共に広くその名を知られるようになった作曲家の宇都宮安重が助手を務めた。
 時には小杉と同様伊福部門下の作曲家 原田甫が手伝いに顔を見せることもあった。

 また小杉は、イタリアバロック以前に作られたとされるファンファーレが録音されたテープをどこからか入手して息子・驤齪Yに譜面化させ、第3楽章の教皇謁見の場面に用いたりしている。

 こうして完成した《カンタータ 大いなる故郷石巻》は、石巻の歴史や景観を唱い上げた詩と共に、カンタービレな旋律、長年の民謡研究によって培われた豊かな響きや律動が展開される小杉音楽の特質がいかんなく発揮された内容となり、ソプラノ独唱、バリトン独唱、合唱(児童合唱含む)、オーケストラという楽器編成、および演奏時間のうえでもこれまでの中で最大規模の作品となった。

 《カンタータ 大いなる故郷石巻》完成の翌年、体調不良を訴えて手術を受けたが、その2年後の1976年、49歳という若さでこの世を去った作曲家 小杉太一郎の文字通り最後の大作である。
 
 ここに小杉太一郎自身が初演プログラムに寄せた一文がある。

「今日この会場に見えた人々が、何十年後の石巻の人々へ石巻の輝やかしい歴史を伝え、深く遠い足跡を残し“大いなる故郷石巻”に一段と重厚さを加えて行く事を信じます。」

 この言葉通り、作曲から40年以上経た現在も、石巻の人々によって上演が続けられているのである。




2018年3月11日(日)小杉太一郎 作曲・石島恒夫 作詩《カンタータ大いなる故郷石巻》全曲演奏


「和光3・11を忘れないHP」






作曲家 小杉太一郎 研究活動



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