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「太一郎流コムタン」話譚






(1)


 『サイボーグ009』の音楽を手掛ける1960年代中頃。
 作曲家 小杉太一郎は、冬のある日、突然思い立ったようにある料理をつくりはじめた―――。

 それは深鍋いっぱいにつくられ、調理後もストーブで煮込まれ続けた。
 太一郎は、煮込んだ果てに「障子糊」のようなトロットロ状態になるのを好んだ。

 以来、太一郎は毎年冬に最低2回はつくり、数日食べ続けた。
 食べない時はストーブで煮込んでおけばよい手軽さは、徹夜仕事の夜食にも適していただろう。   

 その料理の名前を家族にたずねられた太一郎はこう答えた。
 これは―――


 「コムタンだ」







「太一郎流コムタン」話譚(1)/(2)




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