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「太一郎流コムタン」話譚






(2)


 「コムタン」とは、牛の肉や内臓を長時間煮込み、透明なスープとして仕上げる韓国の代表的料理である。
 「コム」は、“長時間煮出す”の意の「膏飲(コウム)」が変化したもので、「タン(湯)」はスープの意。

 また、牛テールを煮込んでスープをつくる「コリ(尻尾)コムタン」は、テール肉中の骨が骨髄まで煮出されることから白濁したスープとなる。

 そして、これらと似た料理に牛の肉、そしてたくさんの骨を煮込んでつくる「ソルロンタン」があり、大量の骨を煮出すため「コリコムタン」同様、もしくはそれ以上にスープが乳白色に混濁している。

 しかし、太一郎のつくる「コムタン」は、上記と内容を異にしていた。

 まず、牛の肉・内臓・骨・テールを使わない。代用されたのは大量のベーコンだった。野菜は白菜のみ。
 そして、なにより違うのは、「米」を使用することである。

 深鍋で、すりニンニクとともにベーコン、白菜を炒めた後、米を加える。これに水を入れ、死ぬほど煮る。
 最後に鍋をかき混ぜ、「なんか濁ってないなぁ」と感じた太一郎は―――。

 牛乳を入れちゃった。

 こうして出来上がったコムタンは、どうみても「雑炊」であり、“「タン(湯)」=スープ”の概念から逸脱していた。

 おそらく太一郎は、どこかの焼肉屋で最後のシメにご飯を入れた状態で出されたものを「コムタン」として記憶し、とくに作り方を教わるわけでもなく超自己流で調理したのだろう。
 調理の最後、牛乳を入れ“濁り”を求めたこと、そして「コムタン」という名称を使っていたことから、太一郎が食べたのは「コリコムタン」だったと思われる。

 太一郎がつくるコムタンの味自体は家族たちにも好評だったが、糊のごとき食感だけは大不評だった。

 後年、自分で焼肉屋にも行く年頃になった太一郎の長男・驤齪Yが言った。
「こりゃあ、“コムタン”じゃねえよ」
 しかし、太一郎は頑としてゆずらなかった―――。


「これは絶対“コムタン”でいいんだ!」



 Salidaでは、作曲家 小杉太一郎がつくっていたこの料理を「太一郎流コムタン」と呼称し、その調理手順を驤齪Y氏へ執拗に取材。

 この度「小杉太一郎 生誕90年」を記念し、「太一郎流コムタン」レシピ公開の運びに至りました。


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