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company舞踊曲「トルソー」レコーディングを終えて



「太一郎おじさん」とのつながり


村松 珠美
村松 珠美 氏


 小杉太一郎氏は私の母の従兄にあたります。太一郎氏の父である小杉勇氏と私の祖父がとても仲の良い兄弟だった関係で、母は高校時代、世田谷にあった太一郎氏宅に毎週のように泊まりに行って、太一郎氏の母にお茶を習っていました。太一郎氏の家族はみなとても暖かい人たちでいつも人が集まり、リビングの隣にあった太一郎氏のピアノの部屋にはいつも写譜屋さんが来ていたそうです。

 母の結婚式の時には勇氏が宮城県の民謡「さんさ時雨」を唄い、太一郎氏は持っていたカメラで写真係をやり、当時まだ少なかったカラー写真を撮ってくれたのでした。

 母が太一郎氏の家族と近しかったので、私も子供の頃、太一郎氏の家に母とよく遊びに行きました。「太一郎おじさん」はいつも穏やかで優しく、とても大きな檻の中にこれまたとても大きくて強そうな犬を何匹も飼っていたことが強く印象に残っています。またそこに住んでいた小杉驤齪Y氏(このCDプロジェクトに携わっている太一郎氏の長男)も、小さかった私とよく遊んでくれました。

 私は4歳の時、父にピアノを買ってもらいましたが、そのアップライトピアノを両親と一緒に楽器店に行って数十台の楽器の中から実際に弾いて選んでくれたのが太一郎氏でした。今も私の家にあり、毎日のように使っています。今回録音したTorsoの練習にも、太一郎氏が選んでくれたこの楽器を使っています。

 太一郎氏とのつながりはもう一つあります。高校に入学して、初めて校歌の楽譜を配られた時のことです。何気なく手にとって眺めていると、楽譜の片隅に小さく書かれた作曲者名、「小杉太一郎」という字が目に飛び込んできました。えっ?!毎日あのピアノを弾いていたからといって、「太一郎おじさん」のことを毎日思い出していたわけではなかったので、当時すでに他界していた「太一郎おじさん」が、何の前触れもなく突然目の前に現れた感じがしてとても驚きました。母に聞くと、「太一郎おじさん」は同じ高校の卒業生でもあり、母校のための校歌を作曲していたのでした。

 太一郎氏は私が10歳の時に亡くなりました。遊びに行っていた子供の頃は太一郎氏の仕事について良くわからなかったし、(勇氏が油絵で花の絵をよく描いていたので画家なのだと思っていたくらいです)その後も祖父の家にあったレコード「カンタータ 大いなる故郷 石巻」以外の作品を知らなかったし、Torsoという作品の発掘が、初めて太一郎氏の作品と向き合う機会となったのでした。

 Torsoは弾けば弾くほどわくわくしてくる曲でした。太一郎氏の作品をぜひもっと弾いてみたいという気持ちになる曲です。共演を快く引き受けてくれた猿田泰寛さんの素晴らしい感性が、この曲を一層味わい深いものにしてくれました。

 録音にあたって大変優れた楽器(私が担当した第1ピアノの楽器は本当に素晴らしいベーゼンドルファーでした)と音響環境を準備してくれた驤齪Y氏をはじめとするスペシャリストの皆さまのご尽力で、演奏と解釈の可能性が広がり、全力でTorsoに向き合えたことはこの上なく大きな喜びとなりました。

 また一つ、「太一郎おじさん」とのつながりが生まれたように思います。

 最後になりましたが、太一郎氏の作品の録音という貴重な機会を与えて下さいましたCDプロジェクトの出口寛泰氏と小杉驤齪Y氏に心より感謝申し上げます。




村松 珠美 氏 略歴




レコーディングを終えて


猿田 泰寛
猿田 泰寛 氏


 弾けば弾くほどトルソーの素晴らしさが身に染みました。
 このような素晴らしい曲のレコーディングをさせて頂いた事に感謝致します。 




猿田 泰寛 氏 略歴




■ 舞踊曲「トルソー」について

■ 舞踊曲「トルソー」レコーディング風景






CD「小杉太一郎の純音楽」収録曲
舞踊曲「トルソー」



小杉太一郎 研究活動



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