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映画『妖怪大戦争』音楽「DB2-M3」考(1)  pany



早川優さん&Salida1


映画『妖怪大戦争』音楽テープに収録されている「DB2-M3」は、劇中未使用曲――――――――。


 この度、数多くのサウンドトラックCD制作に携わっていらっしゃる早川優さんとの検討の結果、上記の統一見解を得るに至りました。


【CD「小杉太一郎の純音楽」報道記事】

註

 「DB2-M3」の「DB」とは、個々の音楽素材につけられる固有の番号で「ダビングナンバー」と呼ばれるもの。
 映画の音を構成する三つの要素「台詞」「効果」「音楽」を一つにまとめ、サウンド・トラックとして仕上げる作業を「ダビング」といい、ダビング作業は便宜上、編集済みのフィルムを5~10分程度のロールにわけて行われる。「ダビングナンバー」は、そのロール毎に映画の頭からの順番をしめす通し番号のこと。台詞・効果・音楽に共通して使用され、各々の素材がどのロールに該当するかを示している。
 「M3」とは、M(=音楽)番号の3番の意。つまり映画の頭から数えて3番目に出てくる音楽を表す。

※ [註]文章作成協力:大塩一志

【CD「小杉太一郎の純音楽」報道記事】




―――「DB2-M3」は本編で使用されていないのではないか。


 CD「池野成の映画音楽 牡丹燈籠 妖怪大戦争」制作中、Salidaはこのような疑問を抱きました。
 実際の映画『妖怪大戦争』本編の音楽挿入箇所を確認してみると

・1曲目(DB1)⇒タイトルバック
・2曲目(DB2-M2)⇒古代バビロニアの「ウル遺跡」の説明シーン
・3曲目(DB2-M3?)⇒吸血妖怪ダイモンが南蛮船を転覆させるシーン

となり、「DB2-M3」は南蛮船の転覆シーンに使われる音楽ということになります。また、このシーンでは、作曲者の判断で不気味さを強調するため、音楽テープの再生スピードを意図的に半分にした「半回転再生」が行われています。

 かつて『妖怪大戦争』の音楽が収録された10枚組CD「怪獣王~日本SF・幻想映画音楽体系~」(1994年)ブックレットの「DB2-M3」解説文では、以下のように書かれています。

(DB2-)M3は遺跡から復活したダイモンが船を襲い日本に向かうシーンの曲(本編では再生スピードを落としているが、ここではノーマル再生で収録)。

※ (冒頭の“DB2-”はSalidaが付記)

しかし―――。


半回転再生・専用テープ


 今回のCD「池野成の映画音楽 牡丹燈籠 妖怪大戦争」制作は、まず配給会社に保管されているオリジナル・マスターテープを192kHz/24bitでデジタル化するところからスタートしました。そのため、オリジナルテープに付属する資料を直に確認することが出来ました。(かつて4枚組CD「池野成の映画音楽」で『妖怪大戦争』音楽を収録した際は、当時レコード会社が作成したマスタリング済みのDATテープが存在し、それをマスター音源としたため、オリジナルテープ付属資料に触れる機会はありませんでした)

 映画『妖怪大戦争』のオリジナルテープは全部で4本。そのうちの1本は、付属資料にすべての収録楽曲の再生スピードを半分にするよう指示が書き込まれている「半回転再生・専用テープ」となっていました。

 そして、その「半回転再生・専用テープ」の中に「DB2-M3」は―――。

 収録されていません。

「DB2-M3」は他の通常再生テープに収録され、半回転再生を行うよう指示されてはいないのです。


出だしタムタム


 実際の南蛮船転覆シーンに流れる音楽と「DB2-M3」に違いはあるのでしょうか―――。

 あります。

 転覆シーンの音楽そして「DB2-M3」は、いずれも金管群による、いわゆる「ダイモンのテーマ」ですが、その出だしは転覆シーンではタムタムの「ボワ~ン」(半回転再生)であり、一方「DB2-M3」はグランドピアノの内部に張られている弦をコインで引っ掻く特種奏法(ここでは池野先生らしく低音部を集中的に引っ掻いているようです)の「ボロロロロン」ではじまっています。

 先の4枚組CDでは、「DB2-M3」を「怪獣王」ブックレットに従い半回転再生にて収録していますが、それと聴き比べてみてもやはり「ボワ~ン」と「ボロロロロン」の違いは明白です。


転覆シーンの音楽は何?


 それでは、転覆シーンの音楽にはどの曲が使用されているのでしょうか。

 楽曲表記に従うと「DB2-M3」の次は「DB2イ」という曲になります。「DB2イ」は、あの「半回転再生・専用テープ」に収録されています。そこで「DB2イ」を半回転再生で確認してみると―――。

 「ボワ~ン」

 まさしく南蛮船転覆シーンの音楽です。曲の長さも劇中で流れる時間と同じです。

 念のため、「DB2イ」の次の「DB3」を確認してみましょう。うんうん、たしかに映画の頭から数えて4番目に出てくる音楽―――神田隆の代官とダイモンが浜辺で戦うシーンの通常再生の「ダイモンのテーマ」です。



映画『妖怪大戦争』音楽「DB2-M3」考 (1) / (2)


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