本文へスキップ


 

company池野成 純音楽作品表(2017年更新)



池野成



序奏と交響的アレグロ Introduction et Allegro Symphonique(1952)

Molto Moderato−Allegro  楽器編成:三管編成Orchestra

1952年10月25日 (於:日比谷公会堂)

山田和男(一雄):指揮 NHK交響楽団により初演。
第21回毎日音楽コンクール作曲部門(管弦楽曲)第2位入賞作品。



舞踊曲「夜の果樹園」(1953)

楽器編成:二管編成Orchestra

1953年6月6日 (於:名古屋市公会堂)
第六回奥田敏子舞踊公演

池野成:指揮 名古屋放送管弦楽団により初演。



備考:「夜の果樹園」リハーサルのため滞在していた名古屋で「八丁味噌」の味噌汁を初めて食した池野氏はその味に感動。それ以後、東京に戻ってからも一生を通じて「八丁味噌」以外の味噌汁を自宅で口にすることはなかった。



舞踊曲「作品七番」(1953)

楽器編成:二管編成Orchestra

1953年11月5日 (於:日比谷公会堂)
江口隆哉・宮操子舞踊公演

上田仁:指揮 東京交響楽団により初演。




〈舞踊作品七番の音楽〉 池野成

 此の作品に就いて私はとくに述べることはない。常の如く死物狂いで全力をつくした。後は作家として何を云うことがあろうか。
 唯、舞踊音楽として受ける制限は当然とはいえ、私には余りに大きく感じられた。又、不幸にして作曲に与えられた時間は想像を絶する僅少な期間だった。私は録音の数十分前までスコアを書き続けなければならなかった。単に時間的制限のために少しでも作家の意に満たぬところを残した作品を出さねばならぬ悲しみがどれ程のものかは理解して頂けよう。
 ことに若い作家にとって何等主張をもたない凡作を一つでも上演しなければならないことにでもなったら、正にそれこそ芸術上の自殺行為といえよう。
 此の作品の題名として私は<ダンスコンツェルタンテ>というサブタイトルを入れて頂き度かった。舞踊とオーケストラとのコンツェルト風な設計を試みてみたからである。


「現代舞踊」1953年11月創刊号より



ダンス・コンセルタンテ Danses Concertantes(1953)

楽器編成:三管編成Orchestra

1953年12月10日(於:日比谷公会堂)
東京交響楽団 第58回定期演奏会

上田仁:指揮 東京交響楽団により初演。

備考:舞踊曲「作品七番」を二管から三管編成Orchestraへ改作。


〈自作ダンス・コンセルタンテに就いて〉 池野成

 この曲は先月11月に行われた文部省芸術祭に際し委嘱を受けて江口・宮舞踊団のために書き下した舞踊組曲で、初演指揮をして頂いた上田仁氏はじめ東響の方々の御好意あるお奨めに従い、演奏会用として若干改作したものであります。
 舞踊曲として受ける制約は当然のことかもしれないが私には余りにも大きな重圧に感ぜられた。又作曲に与えられた時間は極度に僅少なもので、かゝる條件の下で仕事をしなければならなかったため意に満たぬ点も尠くなかったが、全面的な改作には又時間が許されなかった。
 曲は次の七つのカラクテールから成っている。

カラクテール 1 アレグロ ヴィヴァチェ
カラクテール 2 レント アッサイ
カラクテール 3 レント エ ペザンテ
カラクテール 4 リトミコ オスティナト
カラクテール 5 プレスト
カラクテール 6 アダジオ
カラクテール 7 アレグロ ヴィヴァチェ



東京交響楽団第58回定期演奏会プログラムより


「ダンス・コンセルタンテ」収録CD




バレエ「ボロと宝石」(1954)

楽器編成:管楽器群、低音弦楽群、打楽器

1954年5月1日(於:旧帝国劇場)
第五回近藤玲子バレエ団公演で初演。


舞踊曲「カリジア海」(1955)

楽器編成:5 Percussioni 2 Pianos

石井晶子舞踊団公演で初演。



舞踊曲「増殖儀礼」Totem Intituma(1959)

楽器編成:Trombone & Percussion Ensemble

1959年6月28日(於:日本青年館ホール)
現代舞台藝術協會 第一回公演


岩城宏之:指揮 SASC管弦楽団により初演。
台本:池野 成 演出:今井重幸 出演:三条万里子、西田 尭 他




〈増殖儀礼について〉 池野成

 トーテムという語は北米インディアンの中から発見された言葉でやがて一般的な民俗学上の慣用語となったものである。或る社会集団と特定の動植物、無生物、或は神話物存在等との間に呪術宗教的な親縁関係があるという信仰に基いたこれら、動植物、神話物存在等をトーテムと称する。

 インティテュマなる語は中部オーストラリアのアルンタ族のものであり、トーテム集団と関聯して行われ、トーテム動物(或はトーテム植物)を祈殖する儀礼の名称であるが、斯様な儀礼も又すべての民族に普遍的にみられるものであり特定のものを指すのではなく一般的な意味で増殖儀礼と題した次第である。インティテュマはトーテム集団によって組織的に執行される儀礼であり厳粛と秘密の中に進められ歌声の外は全く沈黙が保たれる。彼等にとってインティテュマのもつ意義は絶大であり生活の一切を支配する怖ろしい呪術の世界である。タブーという様な観念の発生の根源もかかるインティテュマが由来するトーテミズムの中にあるわけである。

 未開族のもつ音と動きの意味も我々が音楽や踊りに対してもっている概念の如き生易しいものではない。彼等のドラムの響きが我々に与える衝撃の異常な激しさによってもそれは充分に理解することが出来る。しかも彼等の語る言葉は我々の血の中に我々自身持って居た実はよく知っている言葉に外ならない筈である。それ故にこそ誰もが遠い未開族の聖歌の告げる意味をひしひしと直接に感じとることが出来るのだと思われる。火の如き素手で打ちまくるドラムは何日もの間絶えることなく続くこともあると云われる。踊り手は踊り続け乍ら足で地面を掘り起こし遂には彼等の様体の全部が地中に没するまでその穴を拡げ疲労の極に倒れても更に全身の痙攣によって踊りを続けようとする種族もあると云うことである。

 未開族の聖歌が我々に告げるあの主体が完全な忘却のなかに消え去る個別法則の崩壊。無意識界の本能的なエネルギー。猥雑なまでに活力に満ちた生命的な叫び声、作曲者である私にはこのようなコセモスを作りたいということが常に関心と興味の中徳となるのである。



現代舞台藝術協會 第一回公演プログラムより




EVOCATION  エヴォケイション(1974)

楽器編成:Solo Marimba, 6 Tromboni, 6 Percussioni

1977年2月7日(於:第一生命ホール)
「現代の音楽展77」


有賀誠門
:指揮 東京音楽大学トロンボーン科・打楽器科
マリンバ独奏:岡田真理子
により初演。


備考:栄子夫人に献呈。



〈エヴォケイション〉 池野成

この曲は3年前の1974年春に書き了えた旧作であるが、種々の事情から演奏の機会を得ず本年2月、松村禎三氏のお勧めによる現代音楽協会の現代展77に於ける演奏が初演となった。
マリンバを中心とする曲という委嘱を受けて生れた作品であるが、委嘱を受けた際私はマリンバの音楽に格別積極的な関心をもったことを覚えている。しかしマリンバを飽くまで打楽器として考えるなら、打楽器を偏愛すること一方ならぬ私にとって興味の湧かない筈もなく、膜面打楽器群の叩き出す筋肉的律動の中に響くマリンバの豊醇な熱帯海洋性の色彩を聴きたいという願望がこの曲を書く動機となった。EVOCATIONという題名も古くから歴史と共に交わしたであろうマリンバと打楽器群によるヘリオトロピックな音楽を遥かに偲んで付けたものである。



1977年5月30日東京音楽大学パーカッショングループ演奏会プログラムより




TIMPANATA  ティンパナータ(1977)

楽器編成:Solo Timpani, 1 Flauto, 3 Corni, 3 Tromboni, 1 Tuba, 5 Percussioni

1977年10月30日(於:東京藝術大学第6ホール)
東京藝術大学創立九十周年記念演奏会

ソロ・ティンパニ:有賀誠門
アルトフルート&フルート:中川昌巳
ホルン:大橋秀丸、村松正春、南浩之
トロンボーン:野武重忠、田中康之、沖野信雄
テューバ:杉山淳
パーカッション:中谷孝哉、前田均、近藤高顯、山口多嘉子、河合尚市
により初演。

備考:有賀誠門氏に献呈。


RAPSODIA CONCERTANTE ラプソディア コンチェルタン(1983)

楽器編成:Solo Violino,三管編成Orchestra

1983年10月23日 NHK-FM「現代の音楽」

磯恒男:ヴァイオリン独奏 山岡重信:指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
により放送初演。


〈ラプソディア コンチェルタンテ〉

独奏ヴァイオリンとオーケストラのために書かれたこの協奏的作品は、これまで研究し育んできたアジアの音素材により作曲されています。即ち、我が国の古い人声による音楽、声明などにみられる旋律形の断片にはじまり、作曲者の心に充たされた音のルーツ。チベットのラマ教の典礼音楽、アジア・アフリカに共通するような打楽器群の響きなど、それらを集積し、自由な変容を加えることによって、協奏曲の完成を試みました。
しかし、ヴァイオリンという楽器を意識すればするほど、民族的な素材に傾いて、当初のヴァイオリン協奏曲というよりRAPSODIA CONCERTANTEをもってタイトルとするに相応しい曲に仕上がりました。


NHK「現代の音楽」番組内の作品解説より




OCTET  八重奏(1984)

楽器編成:6 Euphonium, 2 Tuba

1984年5月2日 (於:練馬文化センター・小ホール)
東京音楽大学テューバ・ユーフォニアム・アンサンブル第6回定期演奏会

野口芳久:指揮 東京音楽大学テューバ・ユーフォニアム・アンサンブルにより初演。



〈八重奏〉 池野成

 此の八重奏曲は6partのEuphoniumと2partのTubaのための作品である。
 私の古代趣味に導かれるままに、明らかに我国の仏教音楽の源の一つに相違ないと考えられるチベットのラマ教の典礼音楽から想を得て此を書いた。無論、ラマ教の吹奏楽器に関しては、我国の仏教音楽に何等の痕跡さえ認めることは出来ないのであるが、そのロング・トランペットが連吹するdroneの響は、私の金管楽器への原点の様に思われる。

東京音楽大学テューバ・ユーフォニアム・アンサンブル第6回定期演奏会プログラムより




FRAGMENT ANTIQUE  古代的断章 (1984)

楽器編成:12 Tromboni, 6 Percussioni

1985年1月21日(於:練馬文化センター・小ホール)
東京芸術大学トロンボーン・アンサンブル第5回定期演奏会

本名徹次:指揮 東京芸術大学トロンボーン科・打楽器科により初演。


〈古代的断章に就いて〉 池野成

 此の作品は東京芸術大学トロンボーン科の学生諸士の御依頼を受けて書いたものであり、拙作の演奏のために力を尽くして頂いた芸大トロンボーン科、及び芸大打楽器科の学生諸士に心からの感謝を捧げる。
 私の音楽上の想念は常に「古代的なもの」をめぐって集中している。言う迄もなく、音楽の古代における姿と云うものは美術とは異なり、今日、伺い知ることさえ、もとより不可能であるが、その故に、その幻影たりとも把えたいと云う願望も一層強い。勿論、私の関心が古代の音楽の再現にあると云うわけではなく、止むことなく惹かれる中心をなすものはその生命力であり、音が人間に対して意味したところのものである。さまざまな民族音楽の中に古くから伝承されたものを通してしか把えようもない古代の幻影に過ぎないとは云え、それが私の想像力の源泉である。「古代的断章」ーFragment antiqueーを以ってタイトルとした所以であり、原始的な音楽のもつ素朴な姿の中に生命のヴィジョンを求めようとした。


東京芸術大学トロンボーン・アンサンブル第5回演奏会プログラムより




PRELUDE プレリュード(1987)

楽器編成:Brass Band

1989年2月26日(於:石橋メモリアルホール)
東京ブラスコンコード第7回定期演奏会

井上謹次:指揮 東京ブラスコンコードにより初演。

備考:《OCTET(八重奏)》をBrass Band編成に改作。



Omaggio a Maestro A.IFUKUBE(1988)

楽器編成:Chamber Orchestra


1988年2月27日(於:サントリーホール・小ホール)
伊福部昭先生の叙勲を祝う会 祝賀コンサート

石井眞木:指揮 新星日響室内オーケストラ(ピアノ:志村泉)により初演。


〈バレエ曲「日本の太鼓」より〉 池野成

 この小曲は伊福部昭先生がバレエのために書かれた作品「日本の太鼓」の中にある9拍子のオーケストラ・テュッテイによる律動主題から着想を得たものであり、その原形は曲の集結部にティンパニー・ソロの形で引用させて頂いた。主部の反復するフルートの音型は3個のティンパニーの音関係が暗示するフリギア旋法から自然に導き出されたものであり、この対比として配した強奏のホルンのユニゾンは先生の多くの作品に共通する著しい旋律的特徴の一つである土俗的な四度のテトラコードに依っている。

伊福部昭先生の叙勲を祝う会 祝賀コンサートプログラムより



TAMBURATA タンブラータ【8 percussionists】(1989)

楽器編成:8 Percussioni

1989年11月17日(於:上尾福祉会館・中ホール)
第13回埼玉県アンサンブルコンテスト

埼玉県立伊奈学園総合高等学校により初演。

※ 同タイトルの1996年作曲《TAMBURATA》【20 percussionists】の作品内容とはまったく異なる。



TAMBURATA タンブラータ【20 percussionists】(1996)

楽器編成:20 Percussioni

1996年6月2日(於:麻生文化センター)
96’PERCUSSION FESTIVAL

百瀬和紀:指揮 フェスティバル・アンサンブルにより初演。


〈タンブラータ〉 池野成

 古来我国は多様にして豊富な打楽器を持ち、それを大切に伝承してきた国の一つであり、誰でも打楽器の魅力の真髄に触れる機会に恵まれるはずである。私もその一人であり、今日に至るまで秘密を自分なりに少しでも明らかにしたいと願い、それに努めてきたのであるが、依然として打楽器に関する謎は深い。その故、日本打楽器協会から打楽器合奏体のために小曲を書くようにご依頼を受けた時、私に、お受けする資格があろうとは思えず、大いに迷った。
 打楽器を別格の楽器として尊重してきた諸民族の打楽器合奏体の音楽を聴く時、私はその聴覚的秩序に音楽としてこの上ない喜びに満たされ、同時に、その見事な楽器法に感嘆することしばしばである。古く長い歴史をもつ打楽器合奏体の音楽の中にこそ、打楽器の秘密を解く鍵があると私は信じている。この度も、西アフリカ諸民族の打楽器合奏体の音楽に鼓舞されてこの小品TAMBURATAを書いた。タイトルとした“TAMBURATA”はイタリア語動詞Tamburare―太鼓を打つ―の過去分詞形の名詞的用法で、太鼓で打たれる作品という程の意味である。



96’PERCUSSION FESTIVAL プログラムより




DIVERTIMENTO ディヴェルティメント(1997)

楽器編成:8 Percussioni

【初演】
2001年1月21日(於:ひたちなか市文化会館・大ホール)
第6回東関東アンサンブルコンテスト

演奏:栃木県立宇都宮北高等学校

【公式舞台初演】
2006年11月23日(於:第一生命ホール)
池野成メモリアル・コンサート

演奏:渡辺由美子&Discussion of Percussion“Q21”








※ 作品作曲年は直筆譜に記載されているものを表記





作曲家 池野 成 研究活動


inserted by FC2 system