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バレエ「戰國時代」についてcompany



 バレエ「戰國時代」(全三幕四場)は舞踊家 橘 秋子氏により、日本を題材にしたバレエ、「飛鳥物語」音楽:片岡良和(1962)、「角兵衛獅子」音楽:山内正(1963)に続く作品として創作された。上演時間約2時間、戦国時代の世界を総てクラシックバレエのテクニックによって描いた非常に斬新な作品である。

舞踊家 橘 秋子

橘 秋子 氏 略歴


 1966年11月25日「牧 阿佐美バレエ団 11月定期公演」(於:大手町サンケイホール)で初演され、翌1967年7月2日にはストーリー・振付け等に改訂が施され「牧 阿佐美バレエ団 第29回定期公演 定期公演5周年記念」(於:東京文化会館)で再演された。初演・改訂版いずれも作/演出/振付 橘 秋子、福田一雄 指揮 東京交響楽団により上演されている。

1966年「牧 阿佐美バレエ団 11月定期公演」  1967年「牧 阿佐美バレエ団 第29回月定期公演」

1966年「牧 阿佐美バレエ団  11月定期公演」 プログラム(左)
1967年「牧 阿佐美バレエ団 第29回月定期公演」プログラム(右)


 バレエ「戰國時代」改訂版のおおよそのストーリーは、

【第一幕】
 戦国の血腥い風が日本全土を吹き荒れていた頃、一つの城が落ちる。その中で緋縅(ひおどし)の鎧をつけた若武者が戦いによって深手を負い倒れる。朦朧とした意識の中、誰かが自分の金袋に触れたのを感じ若武者は思わず刀をふるう。しかし、それは金目のものを目当てに近づいた流民の母親だった。思わざる殺生に愕然とした男は、自分の生き方に疑を持ち、母親にすがりつく子どもに金袋を与え、出家の道を歩まんと決心する。そして、苦悩の果て、ついに無想の境地に到達した男は僧侶となり雲水の旅に出る。

【第二幕】
 諸国行脚の托鉢の途中に立ち寄った山間の寒村で、僧侶は偶然にも、かつて自分が与えた金袋を持つ流民の子どもに手厚くもてなされる。子どもは可憐な娘に成長していた。己の眼を疑うも、僧侶は流民の子との間に、宿命的なつながりを感じる。
 いくつかのエピソードを挟んだ後、娘は恋人である人形師と二人で都に出ることを決意し旅立つ。
 娘の身を案じた僧侶は二人には知られないよう身を隠してその後を追う。

【第三幕】
 砦の工事を急ぐ水門近くへとやって来た人形師と娘は、人買いの陰謀により、娘は金で売られ、人形師は人夫にされてしまう。
 これを終始見ていた僧侶は、夜、城に忍び込み娘を救い、しいたげられた女達や苦役にあえぐ人夫達を次々に解放する。
 しかし、これを知った武士達が人々に襲いかかり、僧侶の力にはかなわぬと見るや水門を開き、水責めを企てた。僧侶は覚悟を決め、水門の歯車と鎖に取りつき水門の扉を閉めるも、激しく廻る歯車に巻きこまれてしまう。僧侶の念力に城壁は崩れ落ち、武士達はその下敷となり全滅する。
 
 娘は歯車まで走り登り、その場に泣き崩れる。
 救われた人々は今や、昇天して行く気高い僧侶の姿を仰ぎ見、感動に号泣するのだった。

【終曲=昇天】

というものであり、主要キャストは「娘」:牧 阿佐美、「緋縅の鎧武者(後の僧侶)」:横山忠滋、「人形師」:江川 明によって上演された。



 また、作曲者 小杉太一郎の没後、バレエ「戰國時代」の音楽を抜粋・再構成して「恋の絲」(1984)(1990年7月、牧 阿佐美バレエ団  旧レニングラード・モスクワ公演に際して、手を加えグランド・バレエに発展させ「戦国の恋」と改題)、「北斗」(1992)のバレエ作品が創られている。いずれも演出・振付けは橘 秋子氏の実娘、舞踊家 牧 阿佐美氏による。

 ちなみに「恋の絲」(1984)は女優・元バレリーナの草刈民代が初めてプリマに抜擢された作品である。



DVD「ASAMI MAKI BALLET GROUP」

「戦国の恋」(1990)が収録されている
DVD「ASAMI MAKI BALLET GROUP」




CD「小杉太一郎の純音楽」収録曲
舞踊組曲「戰國時代」

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