それでは「DB2-M3」とはいったい何の音楽なのでしょう。本編を確認する限り「DB2-M3」はどこにも使用されていません。
ここからはSalidaの推測です。
音楽挿入箇所の
・古代バビロニアの「ウル遺跡」の説明シーン
・吸血妖怪ダイモンが南蛮船を転覆させるシーン
上記二つのシーンの「間」に、物語の中でとても重要な意味を持つ、
・吸血妖怪ダイモンの復活シーン
があります。
はからずも4000年の眠りをといてしまった墓荒らし達の前に、復活したダイモンがその不気味な姿を現す―――。
いかにも「ダイモンのテーマ」が流れてきそうなシーンです。しかし、この場面に付けられているのは以外にも効果音と台詞(悲鳴)のみです。
「DB2-M3」はこのシーンに使用される予定だったのではないでしょうか。
時が経ち、黒田義之監督もこのことについては御記憶が無いため、その真意は不明です。ただ、「DB2-M3」について、
・テープの再生スピードは、半回転ではなく通常通り。
・なんらかの理由で使用されなくなった劇中未使用曲。
少なくともこの2点は当てはまるものと考えられます。
Salidaはこの疑問を、これまで数々のサウンドトラックCD制作に携わられ、また「怪獣王」の構成代表者でもいらっしゃる早川優さんにご相談しました。暗に「怪獣王」制作に対して「揚げ足を取る」「ケチをつける」という意図はまったくありません。
早川さんは、このほんとうに細かい疑問について、真摯に対応してくださいました。
「DB2-M3」の通常再生、そして半回転再生を確認された後、DVDで実際に南蛮船転覆シーンをご覧になり一言―――。
「この曲(DB2-M3)ではないですね」
そして、このシーンに流れているのは「DB2イ」であることにもご賛同いただくことが出来ました。
併せて、「怪獣王」ブックレットで「DB2-M3」解説文を執筆された大塩一志さんにもお伺いしたところ―――執筆当時から「DB2-M3」は一度本編と照らし合わせて確認しなければと思いつつも、タイトな制作スケジュールの中で、その時間をつくることは難しく、これまで気になっていた―――とのことでした。
以上の経緯から、早川優さん、大塩一志さんと
映画『妖怪大戦争』の音楽テープに収録されている「DB2-M3」は、劇中未使用曲―――。
という統一見解を得られた次第です。
本来ならば4枚組CD制作の時点で気が付かなければならないことであり、深くお詫び申し上げますとともに、CD「池野成の映画音楽 牡丹燈籠 妖怪大戦争」では、『妖怪大戦争』の「DB2-M3」を“劇中未使用曲”として通常再生で収録しておりますことをご報告申し上げます。
映画『妖怪大戦争』音楽「DB2-M3」考 (1) / (2)
CD「池野成の映画音楽 牡丹燈籠 妖怪大戦争」情報
池野成 没後10年 Salida企画
池野成 研究活動