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探訪 小杉太一郎

―日活篇―



宮澤 利徳 インタビュー



(3)


 日活の音楽予算ですか?私に言わせたらいつも少なかったですよ(笑)。だから会社に
「映画制作費の20%くれ!!」
て言ってよく喧嘩してました。
 録音の現場でも、ねちっこい性格の監督だったりすると、ああでもない、こうでもないって言いだして、録音時間オーバーして徹夜になることもあるんだから堪んないですよ(笑)。こっちは一時間単位でミュージシャンを雇ってますからね、そういう時は途中で帰っちゃわないようにダビングルームの隅っこでオーバー分のギャランティをすかさず渡すんです。その頃のスタジオミュージシャンはいつでも受け取りの判子を持ってましたから、それを押してもらうというようなことで(笑)。

小杉驤齪Y氏 宮澤利徳氏 Salida
日活映画 小杉太一郎 音楽担当作品リストを見ながら思い出を語られる宮澤氏。
(撮影:澤田幸弘 監督)



 監督も色々で、例えば鈴木清順監督や野口晴康監督とかは音楽についてはある程度こちらにまかせてくれますが、齋藤武市監督はビシッと注文がきますよね。井上梅次監督も音楽にはこだわってました。市川崑監督はとにかくうるさかったね(笑)。 
 小杉勇監督は半分お任せみたいなところがあるんだけど、やっぱりビシッときますよ。たまたま今、個人的に小杉勇監督の作品を観ることが多いんですけど、やっぱり名作ですね。あれだけ短い時間でもって撮影してね、それでもきちっと「映画」になってますからね。予算も少ないのに、ほんとにびっくりしますね。

 その後、ご存じの通り日本映画はどんどん斜陽していくんですけど、そうなると音楽で大きな編成なんてまったく使えなくなって、コンボとも言えないような数の楽器しか用意できないんですよ。それでどうするかっていったら、前に録音した音楽テープをちゃんと作曲家の許可を得て、お金を払って使うということになるんですね。だから日活が路線変更して撮ったロマンポルノの中には、内容はポルノなんだけど、音楽は大編成オーケストラの立派な曲が鳴っているという映画がいくつかあるわけです。


 あと小杉さんの思い出というとね、昔、僕が犬を二匹飼うことになったことがあって、その時、小杉さんに名前を付けてもらったんですよ。一匹のポメラニアンの方はね………………、ポメラニアンなんてったかな(笑)。もう一匹、毛むくじゃらの犬がいましてね、それには毛むくじゃらなもんだから「シャギー」って付けてくれましたね。
 ………………それでポメラニアンはなんていったかなあ…………………………、あっ!「ロメ」です。「ロメ」!!
 「ロメ」っていう名前はね、なんかヨーロッパの高貴な名前なんだって(笑)。そう小杉さんが言ってましたよ。

「ロメ」
「ロメ」
「シャギー」の写真は現在捜索中
(写真提供:宮澤家)





宮澤利徳氏

 宮澤利徳氏は本インタビューの数ヵ月後、脳幹梗塞のために急逝されました。それは御遺族でさえ「突然、煙のようにいなくなってしまった」と語られるほど、誰もが思いがけないことでした。本インタビューの掲載につきましては、宮澤氏への追悼の意を込めて掲載してはどうか、との澤田幸弘、藏原惟二 両監督の御提案、および宮澤家御遺族の御協力、御了承を賜りました。改めまして宮澤利徳氏の御冥福を心よりお祈り申し上げます。




宮澤 利徳 インタビュー (1)(2)/(3)


宮澤 利徳 氏 略歴


探訪 小杉太一郎 −日活篇−


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