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探訪 小杉太一郎

―日活篇―



宮澤 利徳 インタビュー



小杉 驤齪Y 氏 澤田幸弘 監督 宮澤 利徳 氏 Salida  藏原惟二 監督

小杉驤齪Y 氏  
澤田幸弘 監督  宮澤利徳 氏    藏原惟二 監督


 「探訪 小杉太一郎 −日活篇−」検討会にて、澤田幸弘、藏原惟二 両監督より御紹介いただいたのは、日活で映画音楽を担当する作曲家の選定、作曲依頼、ミュージシャンのスケジュール調整、コーディネート等々を行うインスペクター(通称:インペグ)を長年務められた宮澤利徳氏。
 日活作品に携わった全ての作曲家と仕事を共にされてこられた宮澤氏に「作曲家 小杉太一郎」の思い出をお聞きしました。



宮澤 利徳 氏  出口 寛泰

宮澤 利徳 氏 略歴         取材/文責 出口 寛泰



(1)


 僕はもともと「日本映画音楽家協会」というところにいたんですよ。
「日本映画音楽家協会」というのは、各映画会社で活躍する作曲家を統合する機関として出来た協会で、もともと東宝から始まったんですね。作曲家の服部良一さんとか服部正さんとかそういった方々が理事をされていました。協会専属の演奏家も25、6人はいましてね。そのメンバーがオーケストラの母体になって、そこにいろいろミュージシャンを足して映画音楽を録音してたんですよ。そういうようなところにしばらくいたんです。

 そうしたら、戦時中、興行部門だけ残してあとは大映に統合されていた日活が、1954年(昭和29年)から映画製作を再開したんですね。ですけど日活にはもともと「音楽部」というものが無かったもんだから、それじゃあどうしようってことになって、それで私が派遣されることになったんです。

 ところが、その「日本映画音楽家協会」が当時あまり調子が良くなくてね。そんなに人を派遣できないもんだから、結局、日活に行ったのは僕ともう一人、中川誠っていうのの二人だけだったんですよ。だもんだから日活映画の音楽をたくさん作曲された小杉太一郎さんや鏑木創さん、それから黛敏郎さんも含めて、ほとんど二人で担当したんです。携わった映画作品はあんまりたくさく有り過ぎちゃって内容はほとんど忘れちゃってるんですよね(笑)。

 こちらの澤田監督、藏原監督の作品を担当したことは覚えがありますよ(笑)。

澤田幸弘 監督 藏原惟二 監督
澤田幸弘 監督デビュー作品『斬り込み』、
藏原惟二 監督デビュー作品『不良少女 魔子』
他で宮澤氏は両監督と仕事を共にされている。


 映画の音楽を担当してもらう作曲家を決める流れというのは、少なくとも日活の場合、各映画作品のプロデューサーという人がいますよね。その人がまず監督とかと「この映画では大きい編成のオーケストラで、こういう感じの音楽でいきたい」とか内部で打ち合わせをして、それから私のところに
「宮澤!この作品の音楽は誰が良い?」
と相談に来るわけです。それで私が
「じゃあ小杉さんにしましょう」
と言うと、それじゃあっていうんで、監督の命を受けて私が小杉さんのところに伺って「監督はこういう狙いでもって今回の映画を作りたい」とかお話して「どうか引き受けてください」とお願いするわけです。それで「ダメ」って言われたらダメですけどね(笑)。
 そんなふうに映画作品を制作するごとに私が毎回作曲家の先生のところにお願いに上がるわけですから、自然とたくさんの作曲家の方々にお会いすることになるわけです。

 例えば小杉さんの先生の伊福部昭さんは、なんてったって大先生ですからね。私なんか恐かったですよ。近寄りがたくてね。あと、團伊玖磨さん、芥川也寸志さん、黛敏郎さんのいわゆる「三人の会」の方々っていうのは、見た目は威厳が有ってちょっと近寄りがたいんですけど、お話してみるとそうでもなくてね、ちゃんと仕事やってくれましたよね。

 そん中でもっても、これはお世辞でも何でもなくて、小杉太一郎さんがずば抜けてるんです。
 私が言うのもおこがましいですけどね、いつでも仕事にものすごく熱心に取り組んてくださって、周りのスタッフからとても尊敬されてたんですよ。まあスコアを見たってね、もうメッチャクチャ綺麗に一曲、一曲全部丁寧に書いてありますから。作曲家のYとは全然違う(笑)。
 小杉さんに仕事を頼んで断られたということは無いといっても良いぐらいです。どんなにスケジュールが忙しくても徹夜してやってくれました。

 小杉さんと初めてお会いしたのは、私がまだ日活に配属される前に新東宝で中川信夫という監督が撮った『ほらふき丹次』(1954年)という映画があるんですけど、これが私から小杉さんに音楽をお願いした最初の作品ですね。小杉さんもまだ映画の仕事を始めて間もない頃だったと思います。
 栄田清一郎さんという新東宝のプロデューサーがいて、太一郎さんのお父さんの小杉勇さんの家にしょっちゅう遊びに来ていて、太一郎さんとも仲が良かったらしいんです。その関係で太一郎さんも新東宝の映画を何本かやったみたいなんですよ。




宮澤 利徳 インタビュー (1)/(2)(3)


探訪 小杉太一郎 −日活篇−


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